「キカイ」の子
並んで座っている冬彦と夏美の前で、光の筋が夜空に昇り、星たちを隠すようにまばゆい光が、その美しさに似合わない轟音とともに、暗い空に放射状に広がっていた。







「た~~まや~」





元気を取り戻した夏美が、陽気な声で花火と合わせていた。





「きれいだね。」





冬彦が、花火を見つめながら言った。




夏美もすぐ賛同し、また、花火を見上げ、掛け声を上げていた。







それから、どれくらいの時が経ったのだろうか、少なくとも三十分は座っていたのだが、そんな長さを花火は感じさせなかった。












夏美はいつの間にか、冬彦の横顔をジッと見ていた。






赤や黄の花火に照らされ、時折、暗闇に浮かび上がる、彼の端麗な容姿に夏美は引き込まれていた。
















「…………好き。」



夏美は自然と呟いていた。
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