「キカイ」の子
「え…?鍬原さん、何か言った?」






夏美の声は、花火の音にかき消され、冬彦に届かなかった。




真顔で冬彦が訊くので、夏美は一瞬固まってしまったが、すぐに明るく振る舞った。






「な、何でもない。」





冬彦は、夏美の顔が赤いのを不思議に思ったが、特に何も訊こうとはしなかった。














「……タイミング、悪いなぁ…」






夏美は口をとがらせて、花火を恨めしそうに見ながら、独り言を言った。
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