「キカイ」の子
冬彦は夏美の告白にどう答えるべきなのか迷っていた。







彼は今まで、恋愛など考えたことも無かった。







周りのクラスメートは、雑誌に載っている芸能人や学年一の美人などに、黄色い声を上げていたが、冬彦は、そんな人と恋愛をすることなど夢物語だと諦め、目の前の問題集に集中していた。






だから、彼は好きや嫌いという選択肢すら持っていなかった。








そうやって過ごしてきた冬彦にとって、夏美の言葉は、まさに青天の霹靂だった。










「……はぁ。」





お茶を飲んだ後、風呂に入った冬彦が、大きな湯船の中でため息をついた。










冬彦の視界は、湯から立ち上る白い湯気に遮られ、彼は先を見通すことができなかった。
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