「キカイ」の子
「おはよ~フユピコっ!」





翌朝の登校中、冬彦の後ろから、透が走ってきて、冬彦に挨拶した。





冬彦が、並んで歩く透の方を見ると、透の目が充血していることに気づいた。





「おはよう。透。……どうしたの?目、赤いよ?」


「あぁ、昨日ちょっと、寝不足でな。」



透はそう言うと、大きな声で欠伸をした。




冬彦はそんな透の様子を見ていたが、昨日のことを思い出したので訊いた。







「透。昨日はどこに行ってたのさ。鍬原さんと探したんだよ?」


「鍬原さん…?」





透が怪訝な顔をして冬彦の方を見た。





「夏美さんの名字でしょ?透、忘れたの?」




冬彦がそう言うと、透は笑いながら、



「ド忘れしちまった。」


と言った。






二人がしばらく並んで歩いていると、冬彦が透に尋ねた。






「あれ?今日、鍬原さん来ないね。透、何か知ってる?」



「いや。おれはなんも知らね。」




冬彦の問いに短く、透が答えた。







冬彦は、不思議そうに振り返りながら校門を通った。
< 94 / 363 >

この作品をシェア

pagetop