「キカイ」の子
冬彦と透が教室に入ると、夏美は既に着席していた。





「あれ?夏美のやつ、もう来てんじゃん。」



透が夏美に気づき、冬彦に話した。



「ほんとだ。日直でもないのに…勉強かな?」



冬彦が真顔でそう言うと、透は、



「いや。おまえじゃないし。」



と軽く突っ込んだ。






冬彦も透も、席は後ろの方だったので、一番前の席で、振り返らず、黒板の方を向いている夏美とは目があわなかった。







「……何だよ。夏美のやつ…挨拶ぐらいしろよな。」




冬彦の後ろで、席に着いた透がぼやいた。







冬彦は、何も言えず、ずっと前を向き続ける夏美の後ろ姿を眺めるしかなかった。
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