「キカイ」の子
終業のチャイムが鳴り、みんなが帰りの用意を始めた。



そんな中、冬彦は夏美の方へ向かっていた。







「あの、鍬原さん?」


「……何?…高椿君。」





冬彦が訊いたにも関わらず、夏美は目をあわさずに帰りの用意をしながら、低い声で答えた。





「今日ちょっと、話したいことがあるんだ…良いかな?」





冬彦がそう言うと、夏美の手がビクッと震えた。




そのせいで、握っていた教科書が床に落ちる。




冬彦はそれを素早く拾うと、夏美に差し出した。





「……良いよね?鍬原さん。」


「あたし…今日は早く、帰らなきゃ…」


「すぐ…終わるから…」



冬彦がそう言うと、夏美は今日初めて、冬彦の顔を見た。



そして、


「……うん。わかったよ。」


と、短く、小さな声で言った。










その様子を、透は教室の一番後ろで見つめていた。
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