暴風うさぎ




父親と二人暮らしになり母親がやっていた家事全てを宇佐美がやるようになった。それからは部活もやめて放課後も真っ直ぐ家に帰るようになった。


友達もそんな宇佐美に気を使って遊びに誘わなくなり、一人、また一人と宇佐美から離れていった。

大好きな母親が死んで慣れない家事をやって、帰りの遅い父親を待って晩御飯を用意する。

そんな宇佐美の寂しい姿を知っていながら俺は何も出来なかった。

あんなに守ってもらったのに、
助けてもらったのに、

俺はあいつのヒーローになれなかった。


そうやって中学生活が終わり、宇佐美と同じ高校になったのは偶然だった。あいつなら頭のいい高校にいけるのに自宅から近いこの学校を選んだ。

いや、偶然なんて嘘だ。


何校かの候補の内、宇佐美がこの学校を第一希望にしているのを知って意識しなかった訳じゃない。


俺はもうあの頃の俺じゃないし、いじめられっ子だった事なんて笑い飛ばせるぐらい過去の事になった。

でも宇佐美に対しての恩はずっと心の中にある。

それと辛い時に手を差し伸べてあげられなかった後悔も。



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