暴風うさぎ



俺は話しを反らすように不自然にベラベラ喋った。


『つ、つーかなんで引っ越すのに実行委員なんてやってたんだよ。普通やらないだろ』


『うーん、やる人が居なかったから。でももう次やる人に引き継いだから平気』


『ふ、ふーん……。そういうなんでも引き受ける所変わってねーよな』


『タツだって優しい所変わってないじゃん』

-----------?


『泣き虫で弱いくせに私が大切にしてたウサギのキーホルダー隠された時すごい怒ってくれた。ドッジボールの時も私ばっかり狙われてたら助けてくれたし、お母さんが死んだ時一番に駆けつけてくれたのはタツだった』


『………でも俺は何もしてない』



宇佐美が部活やめて家事をやってる時も、友達と遊べなくなって悩んでた時も、家を飛び出して帰ってこなかった時も俺は何もしてない。

本当になにも……………



『でも見ててくれてたじゃん』


気が付くと宇佐美が俺の隣に移動してきていた。
それは肩が当たるほど近かった。



『何もしなかったんじゃなくて何もしない事がタツの優しさだよ。家出した時も本当は学校の側まで来てたんでしょ?』

『……』


『でも一人で考えたいって私の気持ち分かってたから来なかった。違う?』


『………』


『それで今日は来てくれた。

一人になりたくない私の気持ちに気付いて。

タツは優しいよ、ずっとずっと』



< 29 / 37 >

この作品をシェア

pagetop