暴風うさぎ





『行くなよ』


ふいに出た言葉。


宇佐美は俺にとって台風の目みたいだった。

いつも中心にいて俺をいつの間にか巻き込んでいく。


行かないで、行かないよ。

そんな子供みたいな約束ができない事は分かってる。だけど言わずにはいられなかったんだ。

そんな気持ちを悟ったのか宇佐美はギュッと俺の右手を握った。



『ねぇ、タツは覚えてる?』


宇佐美は何かを思い出したように言った。


『中学の卒業アルバムの最後のページ。みんなで寄せ書きし合ってたでしょ?タツ、私の寄せ書きになんて書いたか覚えてる?』

『寄せ書き?』


あー、確かに書いた記憶はあるけどクラスメイト全員に書いてって言われてたし何て書いたかまでは…………



『卒業おめでとうとか?』

『ブー、はずれ』

『これからも宜しくとか?』

『ブーブー、はずれ』


いや、俺書く事ないからその2つを適当に書いてた記憶があるんだけど。

宇佐美にだろ?宇佐美になんて………



『一言頑張りすぎって』

何故か宇佐美は嬉しそうだった。


『あの頃みんなに頑張れ頑張れって言われてて、
自分でもそう暗示をかけてた。なのに泣き虫なタツに頑張りすぎとか言われてさ』

『……』


『あの時は泣いたな。今まで我慢してた分まで。
だからいつかお礼言えたらいいなって思ってた。言わなきゃって。ありがとうね、タツ』



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