暴風うさぎ
platonic love
『きゃっ………』と宇佐美が耳を塞ぎ、俺達の距離はさらに近くなった。
『雷がどっかに落ちたんだよ』
俺は微動だにせず、カーテンを少し開けると外の雨風はさらにひどくなっていた。
『つーかなに、幽霊とか全然平気なくせに雷が怖いの?』
『う、うるさいな。そっちこそ怖がりだったくせに雷なんで平気なの?』
『雷は昔から平気なんだよ。ってか雷ダメなのによく台風の中、学校に来るよな』
『その時は雨だけだったの!………あ』
突然思い出したように宇佐美が口を開けた。
『やばい、お父さんに連絡しないと』
宇佐美が慌てて携帯を取り出した瞬間、俺はそれを止めた。
『大丈夫。俺が学校に着いた時、新井に宇佐美は見つかったって連絡いれたから。今頃は親父さんの耳にも入ってるよ』
『……そっか』
『まぁ、帰る気になったんなら送ってくよ。雨風すごいけど今帰れば………』
俺が言い終わる前に宇佐美が服の袖を掴んだ。
『ごめん、今日は家に帰りたくない』
強いはずの宇佐美が弱く見えた。
いや、強いはずがないんだ。明日から知らない土地で暮らして学校も変わって、きっと不安で仕方がないんだと思う。
『………宇佐美……』
『ごめん、変な事言って。タツこそ帰ってもいいよ?私は明日の朝には帰るしさ』
気が付くと俺は宇佐美を抱きしめていた。