暴風うさぎ
だけど少なくとも俺はこの日常が気に入ってる。
昔の自分も昨日の自分も。
『つーか、なんで私服なの?』
登校してきた新井が早速屋上でコンビニのおにぎりを食べていた。昼飯じゃないのかよ。
『あー、制服家に忘れた』
『え、忘れるとかなに?どうやったら制服忘れられんの?』
新井の反応を楽しみつつ、俺は屋上の手すりに寄りかかった。青空に透かした右手を見つめて自然に笑みがこぼれる。
……………相変わらず不器用な奴。
『なぁ、曽根町ってどれくらいの費用が必要?』
まぁ、俺も不器用だけど。
『は?曽根ってあの海があるあそこ?さぁ行った事ないけど遠くね?往復8万くらい?』
『8万……短期できついバイトすれば1ヶ月でたまるか』
『なに?曽根町に行くの?何の用事?』
右の手のひらにかかれた携帯の番号。
でも電話なんてしてやらない。
『用事じゃねー。忘れ物』
『忘れ物?』
『好きって言い忘れた』
直接言ってやる。ふたりとも寂しがり屋のうさぎだから。すると新井はため息をついて笑った。
『なにそれ、純愛じゃん』
-------------------「暴風うさぎ END」