図書館>>>異世界
夜がぐっすり眠りについた頃。
「で、どうなのよルーク。この黒髪が賢者なわけ?確定した?」
宰相アレンがひょっこり現れた。
アレンが見詰める先は、ベッドですやすや眠る黒髪の少女だ。
「やたらと騎士と姫はなついてるみたいだけど?そんなんじゃあ証明にはならないよね、全く」
三人で眠る異世界人に、遠慮ない胡散臭げな視線を送る。
彼の柔らかい茶色の髪からのぞく、冷たい光を宿した赤色は、明らかに三人を警戒していた。
「賢者かどうかは実際わからないな。
しかしヨルは……そこらの女とは、違う」
「………、は?」
まさかあのルークからの言葉とは思えず、アレンは目を丸くしてルークを見た。
畏れられる黒とは違う、忌まれる赤の瞳で。
「いや…ヨルは不思議な人間だ。
会って間もないが、とても居心地がいいんだ」
柔らかい笑みを口元にたたえ、夜の髪を優しくすくルークに、今度こそアレンは呆気にとられた。
「ちょっと、ちょっと!わかってる?
ルークは王子なんだよ?あっさり信用しちゃうわけ?
てか、まだ身元すらも不明なんだからね黒髪。
信用して何かあったら困るんだけど」