図書館>>>異世界
家庭教師、のち
今日から私の一日の予定に、追加された時間があります。
「では、自己紹介しますね。
私は王子たっての希望により、貴女の教師を勤めます、シズ=レイと申します」
穏やかな表情をした、いかにも教師な人物が丁寧に頭を下げてきた。
「宜しくお願いしますシズ先生。
私のことはヨルと呼び捨ててください」
物腰柔らかで上品な佇まいのシズ先生に、少々緊張しながら挨拶した。
「わかりました。では、ヨル―――早速ですが、何か質問はありますか?」
「はい。この国の歴史及び隣国・夕凪の歴史、そして両国の歴史は全て書物で頭に叩き込みました」
シズ先生は感心したようにうなずいている。
「しかし、現在の状況が私にはわかりません。
まずはこの国を教えてください」
「……どうやら土台は出来ているようですね。結構。
ではお話しましょう――」
つまりは、実質の権力はルーク王子が握っている。
父王は引退済み。先の王の時代から隣国との戦は無し。束の間の平和である。
「不味くないですかねえ」
「……どうして、そう思いますか?」
心なしかシズ先生の顔つきが変わった。試すような顔に。