雪割草
第一章~紫色の夜明け
ビルの谷間が紫色の光で染まり始める。
高く聳え立つ群れの上層部は、まるで自分の意志でそうしているかのように等間隔で赤く明滅していた。
ビル群の谷底には、幾何学模様の道路が縦横無尽に張り巡らされ、朝靄の中を朝刊配りのバイクらが白い煙を吐いて走り去って行く頃……。
緩やかな坂道のガード下をリヤカーを引きながら歩く男がいた。荷台には何枚にも重ねられた段ボール。
見たところ五十代後半位の風体だが、実際はもっと若いようだ。
それもその筈、男の髭は伸び放題、厚手のジャンパーは至る所に穴が開き、片足を引きずりながら歩くその様子は、働き盛りの四十代前半には到底見えはしなかった。
そんなシルエットはビルの谷間の朝日を背中に浴びながら、新宿の街を後にして行くのだった。
高く聳え立つ群れの上層部は、まるで自分の意志でそうしているかのように等間隔で赤く明滅していた。
ビル群の谷底には、幾何学模様の道路が縦横無尽に張り巡らされ、朝靄の中を朝刊配りのバイクらが白い煙を吐いて走り去って行く頃……。
緩やかな坂道のガード下をリヤカーを引きながら歩く男がいた。荷台には何枚にも重ねられた段ボール。
見たところ五十代後半位の風体だが、実際はもっと若いようだ。
それもその筈、男の髭は伸び放題、厚手のジャンパーは至る所に穴が開き、片足を引きずりながら歩くその様子は、働き盛りの四十代前半には到底見えはしなかった。
そんなシルエットはビルの谷間の朝日を背中に浴びながら、新宿の街を後にして行くのだった。