雪割草
 香奈は目尻を拭った。

「でもさあ……。

今はちょっと反省してるんだ……。

お母さんに悪い事したなって……。

お母さんが怒るのも無理ないよね。

一人娘の私がこんなんじゃあさ……。」

 段々と声が掠れてきていた。

何かに憑かれたかのように、彼女は更に喋り続けた。

「うちは結構複雑でね。

お父さんは女を作って、家を出て行っちゃったの……。

その後は、ずっとお母さんと二人っきり……。

そういうのも、あってなのかな……。

男の人をあんまり信用出来ないんだよね……。」

 香奈はとても寂しそうな目をしていた。

シローは彼女を励ましてあげたかった。

しかし、それをうまく言葉に出来ない気持ちが、もどかしくて堪らなかった。

 ただ、黙々と枯れ枝を火にくべるシローを横目に、香奈は話しを続けた。

「あたしね……。

援交とかする子ってバカだなーって、ずっと思ってた。

でも、家出をしてからお金の為に仕方なく、一度だけって思ってやったの……。

最初は怖かったけど、だんだん体でお金を稼ぐのが平気になっていっちゃった……。

ううん、時々はお金の為じゃなく、寂しさを紛らわす事もあったかな……。

一人ぼっちでいると、無性に誰かと触れ合いたい時ってあるんだよね……。」







バキッ……。


焚き火の中で、枯れ枝が割れる音がした。

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