雪割草
 店内に潜り込んだ香奈は、早速レジ付近を探して廻った。

確かに買い物籠からレジ袋へと詰め変える台の横に、製氷機を見つけた。

しかし、゛お一人様一袋まで゛という注意書きが目に入り、備えてあるビニール袋も小さいものだった。

香奈は仕方なく、その小さな袋に氷を詰め込み、駐車場で待つシローの元へと戻って行った。

「駄目だ!シロー。

これしか貰えないよ!」

 香奈の手には一袋の氷が水滴を滴らせていた。

ヤッパリか……。

 シローの思惑は外れてしまった。

しかし、これ以外に方法は無かった。

「ごめん、香奈ちゃん。

もう一度行ってきてくれ」

 香奈はさっきよりも、一回り大きく頷きながらスーパーの入口へ走った。

彼女の足音が駐車場に余韻を残した。

 シローはリヤカーのロープを外し、ブルーシートの中に美枝子の体を確認すると、腰の辺りに氷を当てがった。

冷え切った体は硬直しているようで、皮膚に弾力は無かった……。

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