雪割草
 午後になり゛小山゛の街を抜けると、辺りは急に雲行きが怪しくなっていった。

空はどんより曇り始め、いつしか雨も降り出してきた。

おまけにこの北風である。

さすがの香奈も無口になっていた。

滝のような雨と風で、大きく揺れる並木の歩道を、二人はずぶ濡れになりながらリヤカーを運んだ。

時々……。

水たまりを走る車にシッパねられながら、無心で歩き続けていた……。

「大丈夫か?香奈ちゃん」

 シローは首を窄めて香奈に声をかけた。

「大丈夫だよ。全然、平気……。」

 大丈夫な筈は無かった。

「どこかで雨宿りでもするか?」

 強い雨に顔を打たれながら、シローが訊いてみると、

「この辺に雨宿り出来るとこなんてないよ!

もう少しで宇都宮みたいだから、そこまで頑張ろう」

 目の前には゛宇都宮市内゛という、看板が見えてきた。

シロー達は雨風を凌げる場所を探して、宇都宮駅方面へと進路を変えていった。

 その頃には夕方も通り過ぎ、すっかり辺りも薄暗くなってしまっていた……。

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