雪割草
駅前のロータリーに着くと、雨宿り出来そうな場所を探して周りを目で伺っていた。
雨足は弱まってきていたが、強風は治まる気配が無く、今夜は近くで夜を過ごさなければならいと考えていた。
二人は慌ただしく行き交う人や車の先に視線を伸ばした。
すると、香奈が何か不審な物を見つけたらしく、シローの袖口を掴んできた。
「ねえ、ねえ!シロー。
あの人、なんか変じゃない?
すっごいプルプル震えてるよ!」
指差された方向には歩道橋があり、怪しげな男の影が欄干に手を突き、震えながら車道を見下ろしているのが判った。
不思議そうにその光景を見ていると、
「あの人何してんだろうね。
あんなに震えて寒そうだね……。」
香奈の言った台詞は同意を求めているようにも聞こえ、それとなく奥歯には深い慟哭があるように感じた。
シローもなぞるようにして歩道橋を見上げ、
「香奈ちゃん、これをあの人に掛けてきてあげなさい」
自分の上着を脱ぎ始めた。
「えっ!いいの?
それって、美枝子さんが作ってくれたジャンパーじゃん!」
「いいんだ!美枝子も分かってくれると思うよ……。」
上着を香奈に手渡すと、荷台のブルーシートに挨拶ほどの視線を送った。
「分かったよ……。」
香奈も渋々承諾した様子で俯き、歩道橋を駆け上がって行った。
雨足は弱まってきていたが、強風は治まる気配が無く、今夜は近くで夜を過ごさなければならいと考えていた。
二人は慌ただしく行き交う人や車の先に視線を伸ばした。
すると、香奈が何か不審な物を見つけたらしく、シローの袖口を掴んできた。
「ねえ、ねえ!シロー。
あの人、なんか変じゃない?
すっごいプルプル震えてるよ!」
指差された方向には歩道橋があり、怪しげな男の影が欄干に手を突き、震えながら車道を見下ろしているのが判った。
不思議そうにその光景を見ていると、
「あの人何してんだろうね。
あんなに震えて寒そうだね……。」
香奈の言った台詞は同意を求めているようにも聞こえ、それとなく奥歯には深い慟哭があるように感じた。
シローもなぞるようにして歩道橋を見上げ、
「香奈ちゃん、これをあの人に掛けてきてあげなさい」
自分の上着を脱ぎ始めた。
「えっ!いいの?
それって、美枝子さんが作ってくれたジャンパーじゃん!」
「いいんだ!美枝子も分かってくれると思うよ……。」
上着を香奈に手渡すと、荷台のブルーシートに挨拶ほどの視線を送った。
「分かったよ……。」
香奈も渋々承諾した様子で俯き、歩道橋を駆け上がって行った。