雪割草
 香奈はシローの元へ戻ると、息を切らせながら、

「ハア、ハア……。疲れた……。」

 リヤカーに両手を突いてのけぞっていた。

それでも、どこか満足げな顔をして、唾を飲み込んでいる。

それを横目に、

「よし、行くか」

 シローは有無も言わさず歩き始めた。

 リヤカーに引っ張っられるようにして、

「ちょっと、シロー!

行くって、どっちの方に行くの?」

 香奈の鼓動に拍車をかけた。

「さあな……。」


 駅のホームからは、発車のベルが聞こえてきた。

 
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