雪割草
 駅前のロータリーを過ぎ、路地裏の小路を歩き始めた。

十五分程歩くと、二人は小さな児童公園を見つけた。

小さな水銀灯に照らされた公園に人影はなく、暗闇にある公衆トイレの中で雨をしのぐ事にした。

 シローはトイレのすぐ横にリヤカーを停め、男子トイレの洗面所へと入って行った。

香奈の方も女子トイレの洗面所へ行き、上着を脱いで乾かそうとしていた。

鏡を見ながら、濡れた髪を手櫛で解いていると……。


バタッ!

男子トイレの方から、もの凄い音が聞こえてきた。

慌てて香奈は隣りの男子トイレの洗面所に走って行くと。

シローがうつ伏せになり倒れていた。

「シロー!大丈夫!」

 香奈はその場に駆け寄り、シローを仰向けにして膝で抱えた。

「大丈夫だよ……。

ちょっと、めまいがしただけだ……。」

 シローは力なく言葉を吐いた。

゛どうしょう……。゛

香奈は気が動転していた。

シローの額には汗が滲んでいた。

いや、雨の雫石なのかもしれない……。

少し冷静さを取り戻し、シローの額に手を当ててみた……。

゛ヤバい!すごい熱だ!゛

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