雪割草
第二十五章~Drug Store Cow Boy
 「シロー!シロー!

ねえ!しっかりして、シロー!」

 香奈はシローの胸の辺りを懸命にさすっていた。

「あぁ大丈夫だよ……。

風邪をこじらせただけだろう……。

ゴホッ、ゴホッ!」

 息をする事さえも、精一杯のように見えた。

香奈は洗面所の廻りを見渡し、何かタオルの代わりになりそうな物を探した。

しかし、公衆トイレの中にそんな物がある訳もなく、

「あたし、薬買ってくる!

ちょっと待ってて!」

 そう言って外に飛び出すと、降りしきる雨の中を走り出して行った。

遠くに見える街の灯りだけを頼りに、香奈は路地裏のアスファルトを夢中で駆けた。

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