雪割草
 あの男が言ってくれた通り、彼が勤めいる系列のスーパーに立ち寄ると、店の従業員はすんなりと氷を分けてくれた。

結局、全部で買い物袋八個分の氷を運ぶことになった。

三人は店員に頭を下げると、両手に買い物袋を携えスーパーと駐車場の間の階段を下りて行った。


「あっ!」

 氷が散乱する音と共に、香奈は階段を踏み外し転んでしまった。

アスファルトに散らばった氷に埋もれながら、

「痛ったった……。」

 足首をおさえて、座り込んだ。


「あら!大丈夫?」

 香奈の後ろを通り過ぎようとした年配の女性が、それを見つけて歩み寄って肩を抱きしめた。

シローと上田も慌てながら、香奈に駆け寄った。

「だいじょうぶか?」

 上田は香奈の肩を抱き、立ち上がらせようと力を入れた。

「ごめん……。」

 香奈も自分で立ち上がろうとするのだが、

「痛いっ……。」

 すぐにまた、座り込んでしまった。

足首がどんどん腫れ上がってゆく……。
ふくらはぎと足首の区別はつかない位だ。

どうやら、足を挫いてしまったみたいだ。

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