雪割草
 シロー達の行く手は更に厳しさを増していき、゛那須゛の峠へとさしかかっていた。

峠の登り車線は、゛遅い車゛と゛早い車゛の二車線に分かれ、車道が広い分歩道は狭くなってしまい、リヤカーが通れなくなってしまっていた。

シローと上田は顔を見合わせ困窮してしまった。

「どうしましょう……。」

 荷台を押す上田がシローに問いかけた。

「仕方ないでしょう」

 シローは゛遅い車゛の車道の方へ、リヤカーのハンドルを向けて舵をとった。

二人はなるべく車の邪魔にならないように道の端に寄ってリヤカーを運んだが、それでも後ろから追い抜いて行く車からは、容赦なくクラクションを浴びせられてしまった。

早くこの状況から脱しなければ……。

寒空の中を汗をかきながら、二人はリヤカーを運んで進み続けた。

数え切れない程の車にクラクションを鳴らされしまった。

あともう少しで峠の登り坂も終わり、歩道の幅も広くなる手前のことだった。


 坂道の手前の方からパトカーのサイレンが聞こえてきた。

嫌な予感がシローの後ろ髪を引いていった。

回転灯を回したパトカーが追い抜いて行くと、五メートル程先に止まり車道を塞いでしまった。

< 152 / 208 >

この作品をシェア

pagetop