雪割草
第二十九章~拘束
 シローと上田は手錠をかけられパトカーの後部座席に乗せられると、そのまま移送されてしまった。

リヤウィンドウ越しに遠のいてゆく、置いてきぼりの美枝子の亡骸を振り返りながら、シローは愛おしさのあまり胸が張り裂けそうになってしまっていた。

そんなことを気にも留めず、若い田中という警官は容赦なくアクセルを踏み、シローと美枝子を引き離していった。

 やがて、二人を乗せたパトカーは、栃木県警の駐車場に到着した。

裏手の出入り口から数人の警官が駆け寄り、シローと上田の身柄を拘束すると、

「おい!こっちに来い!」

 一人の警官が荒々しく声をあげ、二人を署内へ連行していった。

 古臭い匂いがたちこめる建物の内部は、白い壁が茶色に変色しており、至る所にヒビも入っている。

電話がひっきりなしに掛かってきては、皆対応に追われていた。

警官達の視線がシローと上田に集中した。

二人は別々の部屋へ連れていかれ、取り調べを受ける事になった。

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