雪割草
第三十章~正体
「おまえ!自分の置かれてる状況が分かってんのか?」
警官が吠えた。
いきなり机を蹴飛ばすと、上田の胸ぐらを掴み、
「取り調べを受けてる人間が、電話を使って外部と接触出来る訳ねえだろ!」
激しい形相で怒鳴りつけた。
しかし……。
「電話を貸して下さい!」
上田は抗うようにそう言うと、胸を掴まれたまま静かに立ち上がった。
警官の腕を振り払い、取調室の壁に沿いながら歩いて行くと、調書を書く机の上の黒電話の受話器を取った。
警官達は呆気にとられ動けずじまいだった。
上田は直通で電話をかけ、
「もしもし、私だ……。
あぁ……。
それでは、よろしく頼む」
チーン……。
受話器をそっと置いた。
二人の警官は唖然としていた。
何か催眠術でもかけられてしまったような、そんな面持ちで上田の行動を見ていた。
二分後……。
殺風景な部屋の中に、突然電話のベルが鳴り響いた。
年配の警官が即座に受話器を取ると、その顔からは、みるみるうちに血の気が引いていった。
ゆっくりと電話を切り、上田の方を振り向いた途端、
「すいませんでした!」
深々と頭を下げた。
上田は椅子に座り、小さな窓から外の景色を眺めていた。
警官が吠えた。
いきなり机を蹴飛ばすと、上田の胸ぐらを掴み、
「取り調べを受けてる人間が、電話を使って外部と接触出来る訳ねえだろ!」
激しい形相で怒鳴りつけた。
しかし……。
「電話を貸して下さい!」
上田は抗うようにそう言うと、胸を掴まれたまま静かに立ち上がった。
警官の腕を振り払い、取調室の壁に沿いながら歩いて行くと、調書を書く机の上の黒電話の受話器を取った。
警官達は呆気にとられ動けずじまいだった。
上田は直通で電話をかけ、
「もしもし、私だ……。
あぁ……。
それでは、よろしく頼む」
チーン……。
受話器をそっと置いた。
二人の警官は唖然としていた。
何か催眠術でもかけられてしまったような、そんな面持ちで上田の行動を見ていた。
二分後……。
殺風景な部屋の中に、突然電話のベルが鳴り響いた。
年配の警官が即座に受話器を取ると、その顔からは、みるみるうちに血の気が引いていった。
ゆっくりと電話を切り、上田の方を振り向いた途端、
「すいませんでした!」
深々と頭を下げた。
上田は椅子に座り、小さな窓から外の景色を眺めていた。