雪割草
 その声に耳を傾けると、

「お~い!何やってんだ!遅せえぞ~!」

 次の信号の下で、さっきの老人が大きな声で手招きをしているのが見えた。

シローは老人が自分に言葉を投げているのを確認すると、

「あのー。」

 ゆっくりと近付き顔色を伺った。

すると、

「おらんちは、すぐそこだ。

擦り切れてはいるけんど、替えのタイヤがあっから交換してやるべ。

まあ、ついてこい……。」

 信号機を左手に曲がり、老人はリヤカーを引いて先導をきっていった。

 シローも置いていかれないように、重いリヤカーを引っ張りながら着いて行く事にした。

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