雪割草
 四号線から小道を歩き、砂利道が現れ出すと、老人の家に案内された。

茅葺きの屋根と大きな門構え、それに表札には家紋が刻んである……。

如何にも何代も受け継がれてきたような大農家が老人の家だった。

 シローは高い塀の前にリヤカーを停め、手をかざしながら家中を覗き込んでみた。

驚いたことに家の前は、広いサツマイモ畑になっていた。

シローがその広大な敷地に目を奪われていると……。

「おお~い!今帰ったぞ~!」

 老人が門をくぐり抜け大きな声で呼びかけた。

「はいよ~!」

 今度は遠くの方から女性の声が返ってきた。

その声の出どころを捜すべく、シローも門をくぐり、家の前のサツマイモ畑を見渡した。

広々とした辺り一面を茶色に敷き詰めた畑に、所々に無造作に引き抜かれたサツマイモ……。

その畦の間から女の人が顔を覗かせた。

随分と高齢の様子で、立ち上がっても腰を曲げたままだった。

おそらく老人の奥さんなのであろう……。

それにしても老夫婦が二人で切り盛りするには、あまりにも広大な土地だった。



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