雪割草
老婆の曲がった腰が痛々しく思えた。
来る日も来る日も畑に出ては、こうして収穫を繰り返す……。
彼女の支えはきっと、息子さんだけだったのだろう……。
「うちの息子も東京に出ておったんじゃ……。」
シローが物思いにふけっていると、老婆が作業を再開して話しかけてきた。
「結婚して、子供も二人いたんじゃが……。
息子が死んで最初のうちは、嫁さんも子供達も、ちょくちょく墓参りに来とった……。
でも、五年前くらいかの~。
その嫁さんは再婚して……。
それ以来は、とんと来なくなってしもうた……。」
シローは頬を手で拭い、泥を着けながら耳を傾けていた。
「でも、寂しいもんじゃの~。
やっぱり、孫には会いたいけんど……。
東京までは行けんの~。
うちらが会いに行ったら迷惑じゃろうし……。」
老婆は少し顔を上げると、以遠の彼方を見つめた。
老婆の後ろ姿をちらりと伺った。
哀愁が漂う背中は、全てを諦めてしまっているように思えた。
今、彼女の目に映るものは何なのだろう……。
西陽に照らされた畑はいっそう光り輝いて、畦の隙間に影をもたらしていった。
来る日も来る日も畑に出ては、こうして収穫を繰り返す……。
彼女の支えはきっと、息子さんだけだったのだろう……。
「うちの息子も東京に出ておったんじゃ……。」
シローが物思いにふけっていると、老婆が作業を再開して話しかけてきた。
「結婚して、子供も二人いたんじゃが……。
息子が死んで最初のうちは、嫁さんも子供達も、ちょくちょく墓参りに来とった……。
でも、五年前くらいかの~。
その嫁さんは再婚して……。
それ以来は、とんと来なくなってしもうた……。」
シローは頬を手で拭い、泥を着けながら耳を傾けていた。
「でも、寂しいもんじゃの~。
やっぱり、孫には会いたいけんど……。
東京までは行けんの~。
うちらが会いに行ったら迷惑じゃろうし……。」
老婆は少し顔を上げると、以遠の彼方を見つめた。
老婆の後ろ姿をちらりと伺った。
哀愁が漂う背中は、全てを諦めてしまっているように思えた。
今、彼女の目に映るものは何なのだろう……。
西陽に照らされた畑はいっそう光り輝いて、畦の隙間に影をもたらしていった。