雪割草
太陽は沈みかけ、安達太良山の山頂からは、薄暗い闇が迫ってきていた。
林の中から戻ってきたシローの小脇には、一本の木の枝が抱えられていた。
眩しく目を細めてみると、夕焼けの光が浮遊する微細な粉雪を舞い踊らせているように見えた。
やがて、その光は落日となり、容赦なく二人の丸め込んだ背中を叩いているようだった。
シローは美枝子の手を握り、瞑想に溶け込みながらゆっくりと胸の上に戻してあげ、そのまま地面に積もった雪を掻き出していった。
次第に樺色の地面が現れると、シローは木の枝を掴み、穴を掘り始めた。
夜空の星の群れが、小枝を振りかざすシローを照らし続けた。
冷たく固い土の塊を小枝で突ついては、深く掘り出してゆくのだった……。
もう既に指先の感覚は無く、あかぎれで腫れた手を吐息で暖めていると、何処からともなく犬の遠吠えが聞こえてきた。
もう少しだ……。
シローは手を休める事はしなかった。
どこまでも深く、穴を掘り下げていった。
林の中から戻ってきたシローの小脇には、一本の木の枝が抱えられていた。
眩しく目を細めてみると、夕焼けの光が浮遊する微細な粉雪を舞い踊らせているように見えた。
やがて、その光は落日となり、容赦なく二人の丸め込んだ背中を叩いているようだった。
シローは美枝子の手を握り、瞑想に溶け込みながらゆっくりと胸の上に戻してあげ、そのまま地面に積もった雪を掻き出していった。
次第に樺色の地面が現れると、シローは木の枝を掴み、穴を掘り始めた。
夜空の星の群れが、小枝を振りかざすシローを照らし続けた。
冷たく固い土の塊を小枝で突ついては、深く掘り出してゆくのだった……。
もう既に指先の感覚は無く、あかぎれで腫れた手を吐息で暖めていると、何処からともなく犬の遠吠えが聞こえてきた。
もう少しだ……。
シローは手を休める事はしなかった。
どこまでも深く、穴を掘り下げていった。