雪割草
「え~と、一枚二円になったから……。ふ~」
その独り言を、シローは聞き逃さなかった。
「おかみさん!一枚三円じゃなかったでしたっけ?」
おかみさんに駆け寄り、問いただした。
「ごめんなさい、シローさん。昨日は言い出しにくくって……。
最近はガソリン代とかも高くなっちゃって、うちも仕入れ代を抑えなくちゃやっていけないの……。」
そう言うと、おかみさんはレジの中から小銭を取り出し、
「シローさん、今日は五十三枚で百六円ね」
シローの肩下げカバンにお金を入れると、奥の茶の間に引っ込んでいってしまった。
「あっ……。」
シローは言葉に詰まった。
というよりも呆気にとられ、言葉が思い浮かばなかった。
呆然としたまま表のリヤカーに戻ってくると、シローはその場に立ち尽くしてしまった。
いつの間にか、雨がポツリ、ポツリとアスファルトに黒い斑点模様を描いていった。
雨脚が強くなっても、シローはその場から離れられないでいた。
雨粒が体中を濡らし、不安が心を冷やした。
新宿には珍しく、霧が降りてきていた。
その独り言を、シローは聞き逃さなかった。
「おかみさん!一枚三円じゃなかったでしたっけ?」
おかみさんに駆け寄り、問いただした。
「ごめんなさい、シローさん。昨日は言い出しにくくって……。
最近はガソリン代とかも高くなっちゃって、うちも仕入れ代を抑えなくちゃやっていけないの……。」
そう言うと、おかみさんはレジの中から小銭を取り出し、
「シローさん、今日は五十三枚で百六円ね」
シローの肩下げカバンにお金を入れると、奥の茶の間に引っ込んでいってしまった。
「あっ……。」
シローは言葉に詰まった。
というよりも呆気にとられ、言葉が思い浮かばなかった。
呆然としたまま表のリヤカーに戻ってくると、シローはその場に立ち尽くしてしまった。
いつの間にか、雨がポツリ、ポツリとアスファルトに黒い斑点模様を描いていった。
雨脚が強くなっても、シローはその場から離れられないでいた。
雨粒が体中を濡らし、不安が心を冷やした。
新宿には珍しく、霧が降りてきていた。