雪割草
「イタジイ、あんた一人が行ったところで、向こうは首を縦には振らねえぞ。みんなで古川紙業に押しかけようぜ!」

 チュンサンがいきり立って言った。

「おう!そうしよう!」

 何人かが口々に後押しをした。


「そんな事は行ってみないと判らん。とにかく、へたな事はするな!」

 イタジイは杖をつきながら立ち上がり、一人一人の顔を見渡した。

強く頷いて見せた後、「行ってくる」と告げ、公園の丘をゆっくりと下り始めた。 

 静まり返った公園内に、杖をつく音が遠のいていった。

皆、イタジイの背中を見守った。

いやーーー見守るというよりは、託したという言葉の方が正しいのかもしれない。

ここはイタジイに一任するしかなかった。

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