雪割草
 夕方になり、イタジイが戻って来ると、みんなを集会所に集めた。

「さっき、古川紙業の社長と話をしてきた。
今、経営的に大変厳しい状況らしい。
みんなには、本当にすまないと言っていた。

しかし、古川紙業が潰れてしまったら、わしらも段ボールを持って行く所が無くなってしまう。
わしらにも生活があるからのう……。

そこで、社長と話し合って、なんとか一枚二円五十銭という事になった。
端数は切り捨てじゃ。

これで折り合いをつけるしかなかろう……。

どうじゃろ、みんな!」

 イタジイの問いかけに、みんなは俯いたままだった。

萎れた花びらのように、頭をもたれかけていた。


すると、

「今までだって、安いくらいだったんだ。
それを更に、値下げだなんて……。

俺はやっぱり納得いかねえ!」

 誰かが口火を切った。

「そうだ!そうだ!」

 数人がなだれ込むように、それに賛同した。

「これは、決定した事じゃ。
納得できん奴は、ここから出て行ってもらうしかなかろう!」

 イタジイはそう一括すると、自分の段ボールハウスへ帰って行った。

集会所はどよめいたまま錯綜していた。

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