雪割草
第九章~秋祭り
 秋も深まりかけた十月中旬の日曜日。
十二支社通りでは、毎年恒例の秋祭りが催されていた。
十二支社通りは通行止めになり、車道の両側には沢山の露店が軒を連ねていた。

シローと美枝子も祭りを見に行く事にした。

「美枝子、そろそろ出掛けようか?」

 そう言って、シローはいつものボロボロなジャンパーに手をかけた。

「あっ!シローちゃん、ちょっと待って!」

 美枝子は部屋の片隅に置いてあった紙袋の中から、ゴソゴソっと何かを取り出した。

「はい、これを着て!」

 そう言って、美枝子はシローに手渡した。


新品の黒いジャンパーだった。

「どうしたんだ?これ……。」

 少し驚いた表情で訊いてみると、

「ずーっと、縫ってたの。二か月くらいかかちゃった」

 シローは嬉しさの反面、少し照れくさそうに、その真新しいジャンパーに袖を通してみた。

「ちゃんと寸法計らなかったから、サイズが合うか判らないけど……。」

 美枝子は心配そうに、シローを見つめた。

噤んでいる口元が、とても愛らしく感じた。

 彼女お手製の黒いジャンパーは、綿が沢山入っておりとても温かった。
防水加工の生地はキルティングで縫ってあり、手間暇が掛かっている事を思わせた。

何よりも驚いたのは、サイズがピッタリだという事だった。


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