雪割草
 反対側の歩道を走りながら、少しづつ遠のいてゆくニシヤンの後ろ姿にシローは呼びかけた。

「ニシヤン!ごめんな」

「何が!」

「みんな忙しいのに」

「別に、かまわねえよ!」

 ニシヤンは息を荒あげ、呆れたように応えた。

疾走する二人の距離は徐々に離れてゆき、声を張り上げなければ聞こえない程、差は広がっていた。

シローは腹の底から声を絞った。

「俺はバカだったよ!」

「そうだな!」

 ニシヤンの背中は手が届かない位まで遠くに行った。

「でもさー!」

「何なんだよ!シローさん!」

 苛立ち気味にニシヤンは振り向いた。

「なんで、美枝子は何も言わねえで出て行ったんだよ!」

 どうしようもない気持ちをニシヤンにぶつけた。

「知らねえよ!そんなこと。それよりシローさん!そんな泣きながら走ったら危ねえぞ!」

 その叱責が飛んだ瞬間。


 
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