雪割草
 シローは歩道の縁石に足を取られて転んでしまった。

アスファルトの上を擦りむきながら転がり、その勢いは地球の端まで届きそうに凄まじかった。

慌ててニシヤンは助けに走り、

「大丈夫か!シローさん!」

 四つん這いにうずくまるシローを抱えようとした。

「うぅ……。」

 シローは額を地面に擦りつけたまま泣いていた。

狼狽した背中が震えていた。

「おいっ、シローさん!」

 何度となくニシヤンが呼びかけても、シローは微動だにしなかった。

「美枝子!」

「美枝子!」

 今度は涙混じりに湧き上がる感情を声に出して叫んだ。

喉が千切れそうに苦しかった……。

痛々しい様子を伺い、ニシヤンはもう手を差し伸べようとはしなかった。

気が済むまでと思い、そっと見守っていた。

 シローの人生は何時も同じ失敗の繰り返しだった。

あの時も……。

そして、あの時も……。

頭の片隅に置いてあった、過去の過ちが蘇えり、全ての後悔が交錯していた。

 シローは張り裂けそうな胸の中で、

゛おれは……。

俺はまた、やっちまった……。

母ちゃん……。

俺はまた、やっちまったよ……。゛

 そう、叫んでいた。

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