雪割草
 公園に着くと、その光景に皆唖然とした。

公衆トイレの横は立ち入り禁止のテープが張られ、今まで暮らしていた段ボールハウスの場所は、二台のショベルカーによって、地面が掘り起こされていた。

その隣りには大型トラックが停まっており、荷台には植樹用の植木が何本も積み込んであった。

「おい!これは、どういう事だ」

 チュンサンが、その荒廃を見て言った。

「最初から、そのつもりだったんだろうよ……。」

 ニシヤンも、それを見ながら言った。

 みんなは絶望感に捕らわれながらも、リヤカーを歩道に停め、立ち入り禁止のテープの処まで近付いて行った。

シローも美枝子の手を引きながら、彼らの後を追った。

 公園内にはショベルカーのエンジン音が轟いていた。

さっきまでの段ボールハウスの形跡が、跡形もなく消し去られていた。

 まんまと竹中の策略に嵌められたのだった。

 すると、公衆トイレの中から人影が現れた。

涼しげな顔をした竹中が、尿意を終えて出て来るところだった。

< 61 / 208 >

この作品をシェア

pagetop