雪割草
 「テメーッ、俺達の金は、どうなってるんだよ!とにかく、二万二千円今すぐ返せ!」

 ニシヤンが一歩前に出て、声を荒あげた。

「いやあ、それもですねえ。計画が中止になれば返金も可能なんですが、続行している間は手付け金として、お預かりしておかなければならないんですよ」

 竹中は眼鏡の奥で余裕の笑みを浮かべ、あしらうように続けた。

「皆さんは今まで、公共の施設を勝手に使っていたんですよ。
無料で……。

その荒された箇所を直す為に、見て下さいよ。
この重機や植木を……。

これらのレンタル料だって、いい値段がするんですよ」

 竹中は高々と手を挙げた。

それを合図にして、工事中の作業員達は、一斉に仕事の手を止めた。

公園中が静まりかえっていった……。

「お前ら、俺達が戻って来れねえように、木を植えるつもりか?」

 ニシヤンが重々しく言った。

「はあ?どこに植木を植樹しようと、あなた達とは関係ありません!全ては区役所が決める事なんです」

 段々と竹中の口調も荒々しくなってきた。

< 63 / 208 >

この作品をシェア

pagetop