雪割草
 赤紫に腫れ上がった傷の上に、新しい傷が重なり内出血もおこしている。

古い鉄屑が錆びついてゆくように、体中を覆っていた。

 美枝子の吐く息は弱々しかった。

それでも、小さく脈を打っていた。

シローは自分の髪の毛をかきむしり、

「誰が!」

 美枝子の頬に手を当て、

「誰にやられたんだ!」

 架空の悪魔に腹立てた。

゛今、病院に連れて行ってやるからな!゛

 シローは美枝子を背負い、公園の丘を走り出した。

片足を引きずり、遊歩道を下った。


 急に背中が軽くなったと思うと、チュンサンが支えてくれていた。

ニシヤンも竹中を睨みつけながら、後を追ってきた。

 シローは美枝子を背負いながら、自分の足が不自由であることも忘れ、必死に走った。

襟足に生暖かい吐息が吹きかかった。


シローちゃん……。
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