雪割草
時間は押し迫っていた。
夜の闇は赤く燃える炎を浮かび上がらせ、黒い煙りはそれと同化していった。
ニシヤンが河川敷の砂利を鳴らしつつ、シローの背後から声をかけた。
シローは気づかない振りをしていた。
「大丈夫か?」
今度は肩を掴んで声をかけた。
仕方なく頷いて見せた。
風向きが少し変わったらしく、黒い煙りがシロー達の頭上を超えていった。
ニシヤンは煙りが流れる炎の元へと、美枝子を乗せたリヤカーを引きながら、砂利の音を鳴らした。
彼女が天国へ導かれて行くような、そんな軌跡に見えた。
シローは潤んだ瞳で、美枝子の最後を見届けようとしていた。
今、まさに燃え盛る炎の中に消え去ろうとしていた。
そして、ニシヤンの足音が止んだ。
限りなく無音に近い世界で、美枝子の言葉が蘇った。
あの頃と同じような……。
夜の闇は赤く燃える炎を浮かび上がらせ、黒い煙りはそれと同化していった。
ニシヤンが河川敷の砂利を鳴らしつつ、シローの背後から声をかけた。
シローは気づかない振りをしていた。
「大丈夫か?」
今度は肩を掴んで声をかけた。
仕方なく頷いて見せた。
風向きが少し変わったらしく、黒い煙りがシロー達の頭上を超えていった。
ニシヤンは煙りが流れる炎の元へと、美枝子を乗せたリヤカーを引きながら、砂利の音を鳴らした。
彼女が天国へ導かれて行くような、そんな軌跡に見えた。
シローは潤んだ瞳で、美枝子の最後を見届けようとしていた。
今、まさに燃え盛る炎の中に消え去ろうとしていた。
そして、ニシヤンの足音が止んだ。
限りなく無音に近い世界で、美枝子の言葉が蘇った。
あの頃と同じような……。