雪割草
 ゛私の田舎では大晦日の夜、神社で焚き火をするの……。

夜遅くまで起きていて良いのは、大晦日ぐらいだったから……。

とても楽しかったわ……。゛


゛私の田舎の家の近くにも丘があって、そこから見る安達太良山に沈む夕日は、とても綺麗だった……。゛

 その言葉は、次第に鮮明な美枝子の声となり、耳に届いてきた。

最初は自分の心の中だけの幻聴だと思っていた。

でも、それは違っていた。

彼女はーー確かに美枝子は何かを訴えかけている。

シローは、そう思った。

「待って!」

 涙を拭いながら、シローは叫んだ。

「待ってくれ!ニシヤン」

 自ずと土下座をするような、格好になっていた。

「美枝子を……。

美枝子を焼かないでくれ!」

 その言葉にニシヤンは、一瞬戸惑ってしまった。

シローの眼差しは、真っ直ぐ過ぎる程真剣で、心をえぐり取るように鋭かった。

ニシヤンの額には、タラリと汗が流れていた。

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