雪割草
 「焼かないでくれって、シローさん!

このまま、美枝子さんをどうするつもりだ?」

 ニシヤンは手を止め、

「いくら俺達だって、死んだ人をそのままにはしておけないぞ!」

 離した手を大きく広げて訴えた。

「そうだよ、シローさん!気持ちは分かるけど、このままリヤカーの荷台に乗せて置くわけにはいかないよ!」

 チュンサンも、宥めるようにして言った。

 シローは二人に駆け寄り、両手でニシヤンとチュンサンの腕を掴んだ。

「分かってる。分かってるけど、ここじゃないんだ!」

 炎は立ちのぼっていた。

三人の言葉の成り行きを待っているようだった。

「ここじゃないって、じゃあーー何処なんだ?

火葬場に行く金なんてあるのか?」

 ニシヤンはシローの腕を振り払った。

横からチュンサンも口を出し、

「そうだよ!シローさん。俺達はこうするしかないんだ!

ここで美枝子さんと別れて、一生その骨を大切に持っていれば、それでいいんじゃないか?」

 声を枯らした。

 二人が言う事は、もっともだった……。

それでも……。

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