雪割草
 夜更けの国道沿いに二十四時間のコインランドリーを見つけ、少し仮眠をとることにした。

まわっている洗濯機はなく、人影もないようだった。

シローはプレハブで建てられた建物の中へ入ると、無造作に置かれたパイプ椅子に身を沈めた。

蛍光灯が煌々と照りつける下、美枝子の夢を見ていた。

美枝子……。

 知らず知らずのうちに、譫言を口にしていた。

夢の中で、彼女はいつもの元気な姿をしていた。

なんの躊躇もなく、普通に゛シローちゃん゛と語りかけ、何不自由なく動きまわっていた……。

彼女の仕草はしなやかで、清々しい表情が振る舞われていた。

いつものように、長い髪が風にそよいでいる……。

シローはその香しい匂いに、近づこうとした。


んっ!


……そこで、夢は途切れた。

 時々、自動販売機のコンプレッサーが、うなるように音を立てていた。

 シローは蛍光灯の強い光で目を覚ました。

< 88 / 208 >

この作品をシェア

pagetop