雪割草
 教えられた通りに、交差点を曲がり道を進んだ。

辺りは点滅信号機が続く、寂しい通りに変わっていった。

四つ目の信号機を過ぎると、ラブホテルが建ち並ぶ入り組んだ道に入っていた。

そこから先は、河川敷を探して道端の狭い通りを右往左往していた。

 周りの景色に注意しながら歩いていると、急に下り坂になってきた。

おそらく、河川敷が近付いて来たのだろう……。

 シローはハンドルを持つ手に力を入れ、足を踏ん張りながらリヤカーを引いていた。

薄暗い街灯が立ち並ぶ一本道の向こうから、微かに川のせせらぎが聞こえてきた。

車輪の惰力に身を任せ、足早に坂道を下って行った。

 しかし、暫くすると、川のせせらぎは、また別の音にかき消されていった。

 ガサガサッと、リヤカーの荷台のあたりで何か物音がした。

 シローは違和感を感じ、ハンドルを置いて道路の中央に立ち止まった。

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