君がいれば・・・①
「それが出来ないんですよ」



そんな事になったら大騒ぎになるし、君はこのデパートで働けなくなる。



彼女はシンの事を何にも知らないんだな。



ますます面白い。



「出来ないって……」



「来れば分ります」



「もしかして具合が悪いのですか?」



健康そうな彼が目が弱いって言っていたのを思い出した瀬奈の顔が曇る。



「まあ、そんなとこです 貴方に会いたがっています」



どうしよう……。



瀬奈は少し考えてから頷いた。



「……あと10分で終わります」



「では正面玄関の前で待っています」



ジフンはそれだけ言うと行ってしまった。



おばあさんの対応をしていた亜佐美が戻ってきた。



「さっきの人カッコイイね」



「そうかな……?」



瀬奈は深く聞かれないうちに手元の案内書を整え始めた。



「でも……見たことがあるような……」



亜佐美は去って行った彼の顔を思い出そうと考えていた。




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