甘い唇
-1-

新しい日常




―何故あたしは列車に乗っているのだろう。


あたしは今、一人の50代くらいの中年の男と列車に乗っていた。

多分この男は今後あたしを入所させる施設のスタッフかなんかなのだろう。

何故あたしが施設に入所するんだと言えばあたしの母親が殺されたからだった。

あたしが発見したときには心臓のとこにナイフが刺さっていて血がドクドク溢れ出していた。

父親は元々いない。

元からいないんだよ、元から……。


「ところで」

今まで無言だった男が口を開いた。

「お前の名前は何だったか?」

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