★短編★君に会えたら
「幽霊のくせに、か面白いな」

吉野は人事のように笑っていて。

「実はさ、結構前から松井を見かけてたんだ。」

吉野は私を見ずに
環七を見つめて

「いつも暗い顔しててさ、何度も声かけようと思ったんだけど…」

吉野は振り返り私の眉間を指で指した。
「すっげえ怖かったから、勇気がでなかった。」

吉野は笑って。

「それからすぐに事故って…
色んな奴に会いに行ったりしたんだけどさ」

私は吉野から視線を反らさなくて

「皆、気付かねぇんだ。声をかけても
届かないし…寂しくて」


吉野が私の手を握った。

「何処に行けばいいのか分からなくて
不安でさ。
そんな時に浮かんだのが松井だった。」
私は吉野の手を握り返した。

冷たいけどしっかり感触はあって。

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