裏切りの少年
しばらく、沈黙が続いた。


「………まあいい。
それならなぜ、俺を仲間にしようとした」


俺は立ち上がり、ホークを見つめた。


「これまでの計画では、世界のメッセージが存在する確証を得るために行動してきた。
そして、動画があることを確認した。
俺は計画を次の段階に移行したい。
そのためには『G』のスパイが必要だ。
俺は信頼できる相棒としてお前を選んだ」

「それを俺に言っていいのか。
俺が議長に報告すれば、お前の計画は水の泡だ」

「そうなれば、それまでだ。
だが、聞いてくれ。
お前は『G』内部から『動画』と『世界の出方』を見つけろ」

「………俺にスパイをやれと」

「ああ。俺はその間、『W』に潜入して『G』の裏切り者を見つける」

「………バカバカしい」


ホークは撃つ構えをとった。


「選ぶのはお前だ。
だが、一つだけ言わせてくれ。
なぜ、俺達管理側は記憶をもって生まれ変わるんだ。
そして、なぜ保存側は記憶が消去されて生まれ変わるんだ」

「………何が言いたい」

「それは世界が『偽りの世界』であり、そのことを忘れないためだ。
辻本ユウジは管理側として、そのことに気づき、俺も気づいた。
ホーク、お前はなぜ『G』のために仕事をする」

「俺は………」

「俺は『金』のためだった。
しかし、今は違う。俺は『死ぬ』ためだ。
決して手に入らない物だと思っていた。
何度も死に、何度も生まれ変わり、何度も仕事をした。
お前だってそうだろ。
ここで俺と一緒に来なければ、お前は一生そのままだ」

「俺は………
戻りたくないんだ。
あの場所に………」


長年、仕事をしていたが、初めてホークの本心を聞いたような気がした。


「今さら、戻ったところでどうなる。
結局は腹を空かせて、飢え死にするだけだ」


俺はホークの話を聞きながら、俺は目を閉じた。

そして、この世界に来る時の光景を浮かべた。
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