裏切りの少年
季節は秋。

俺は涼しい風を浴びながら門の前に立っていた。

隣には『過激派』の仲間が一人いる。

男の名前は『山口シンゴ』だ。

この男は無口だ。話したことは出会った時ぐらいだ。

それ以降、会話をした覚えはない。

俺は長時間、立っていたので身体を動かしたくなった。

肩を上下に動かし、屈伸運動をした。

しばらく、身体を動かすと隣から視線を感じた。

俺は山口を見ると、こっちを見ていた。


「うるさかったか」


俺は山口に聞いた。

山口は首を横に振り、視線を前に向けた。


「そうか」


俺は元の場所に戻り、先程同様に立った。




―――1時間後
俺は空を見上げながら、今後のことを考えていた。

これ以上、『過激派』に所属していても意味がないだろう。

この8年で『W』を以前よりは調査で来た。

そろそろ、別の手段で『W』を調査しようか………

そんなことを考えていると、一台の車が俺の視界に入った。

車を俺達の目の前に止まり、運転席の窓ガラスが開き、運転手が証明書を出した。

山口が照明書を確認している間、助手席を見た。

運転手を含め、大人が3人、子供が1人………


「んっ………子供」


俺は門の警備をしてきたが、子供を見たことがなかった。

それに大人の1人はこの研究所の責任者である井上博士だ。


「確認しました。どうぞお入りください」


山口は証明書の確認を終えたらしい。

運転手は何も言わずに窓ガラスを閉め、研究所に入って行った。


「おい、山口。あの子は誰だ」


俺は山口に聞いてみた。

山口は首を横に振り、答えなかった。
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