裏切りの少年
「助けを呼んでも無駄だ。
俺からは逃げられない」


男は黒い刀を振りかざした。


「多才能力者か」


俺は救出部隊が来るまで時間稼ぎを試みた。

今までのことを振り返り、この男が多数の能力を使用していることに気付いた。

『C』に『超越者』がいるように『G』も『多才能力者』を保有しているのか………


「そうだよ」


男は即答した。

予測は的中した。

相棒からの情報では隠密部隊に多才能力者が就任したとは聞いていない。

極秘、あるいはつい最近就任したのだろう。


「俺を殺すのは簡単だ。
だが、俺を殺したところで………
『C』を破壊したところで意味がない」

「………」


男は黒い刀を降ろした。


「俺もお前と同じ仕事をしていた。
だから、わかるんだ。
お前の行動が無駄なことだと」

「………君も『G』なのか」

「昔の話だ」


男はしばらく黙りこんだ。


「ホークはどうした」


俺は男に尋ねた。


「彼は死んだよ。自爆してね」

「………そうか」


相棒はこうなることを予測していたのかもしれない。

俺に教えず、爆弾を持っていたなんて………
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