裏切りの少年
―――夜
俺は警備員の宿舎にいた。

この施設は新しく快適だ。

食事や個人部屋も用意されているので生活には困らない。

ただ、警備員が宿舎を警固しているのが気に食わない。

俺は時計を見た。

時間は0100時。

俺は通信機に電源を入れた。

『W』で正体を隠すために常時通信機を持つことも連絡を出すこともできない。

また、この部屋に盗聴器があるかもしれない。

そのため、毎日0100時に相棒、友人感覚でその日の報告を行っていた。

俺は相棒を呼びだした。


『もしもし………』


相棒が出た。


「やぁ、元気か。こっちは元気だ」
(ウルフよりホークへ。そっちの何か問題が起きたか)


『ああ、ヒサ君。こっちはちょっと風邪を拗らせたよ』
(問題が発生した)


「そう。いつ頃から」
(『G』に動きがあったのか。それはいつ頃だ)


『今朝起きたら………』
(昨日の通信後だ)


「風邪か………お前一人暮らしだから誰もいないだろう。看病してやろうか」
(どんな問題だ。直接会うべきか)


『助かる。体温計で計ったら39℃なんだ。仕事忙しいと思うけど、頼めるかな………』
(ああ。出来る限り早急に………)


「わかった。上司に頼みこんですぐ行くから待ってろよ」
(了解。集合場所に向かう)


『ありがとう。待ってる』
(了解)


俺は通信機を切った。




―――その後
俺は急いで宿舎の外にいる警備員に事情を説明した。

友人が風邪で倒れたため、早急に町の方へ戻りたいと………

警備員は通信機で仲間に連絡を取った。

数分後、許可が下りた。

ただし、外出する代わりに監視係を1名付けることになった。

監視係として同じ門警備の山口が担当者となった。

俺と山口は車を借りて、町に向かった。
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